メンバー:I村(L) W辺(レポート)
お互いこの日計画中だった山行が中止になり、あわや「週末山行難民」になりそうだった二人で急遽、米子沢を計画する。新潟に住んでいたことがありながら、沢登りとしては行ったことがなかったこの沢は、いつか遡行したいと思っていたので意見が一致してよかった。
前夜、桜坂駐車場にテントを張り、軽く(ではなかったが…)飲み、翌日7:30行動開始する。
桜坂駐車場の手前右側の舗装路を10数分歩き、米子沢に降りる。しばらくは水の涸れたゴーロを歩く。明らかに酒の残っているI村さんは出だしちょっと辛そうだった。
水流を認め、暑さもあまり感じなくなり少しずつペースを取り戻す。
だんだんと、雪に磨かれたスラブ帯へと変容する沢を快適に遡る。
この沢の岩は、茶色くぬめった所が多く、とても気を遣う。N田さん愛用のシューズに転向し、乾いた岩への安心感は大きいが、「コケッティな沢には向かないよ。」と言っていたのが実感を伴って思い出される。
ホールドが多く、登れる小さな滝が多いのが楽しい。
こういう場所ではフエルトよりも安心できるフリクションを得られた。
直登できない滝でも、高巻きをすることなく側壁を登っていけるところが多い。
大滝は右岸から巻くが、巻道は明瞭。岩の上に土が乗り、わずかに緊張する一歩があっただけで問題なく通過する。冬から春にかけての巻機山で、「大滝がまだ出てるな」「もう大滝が埋まったから滑れるな」など、米子沢滑走の目安にされる滝。この滝が雪で埋まるなんて…と、近くで見て改めてこの地域の雪の多さを実感する。
時々陰るが、この時は日も出ておりザックを置いて深そうな釜で泳いでみる。…が、冷たい!広く明るく、樹冠がかぶさるような沢ではないけれど。さっさと上がって先へ行く。
それもそのはず。先ほどの釜の先にはまだ解けきらない雪渓がブリッジとなって残っている。雪渓が出てきた時点で、私の気持ちは一気に緊張モードに入る。口を開け、冷気を吐き出し靄を漂わせる雪渓に、気温だけではない寒さを感じる。本で見た「雪渓の弱い部分、強い部分」の図が頭に浮かぶ。
今回は、右岸側が壁から離れ、安定してそうだったのでそこから通過。
雪渓を振り返る。美しいものは恐ろしい、と思う。
水流沿いはとにかくヌルヌル。左の側壁をややへつり気味に越えたと思われる。
数年前の大水の際に、ずいぶん荒れて渓相が変わってしまったという話を聞いていたが、この沢の見どころの大ナメ帯は健在。ただし、やはりヌメるので緩傾斜でも足を置く所には注意する。実際、「お!」という声で振り向くと、数メートル滑っていったI村さんがいた。楽しくも危険なナメ帯。
徐々に水流が細くなり、そろそろ源頭部の様相。上部が草原となっている沢の詰めは、最後まで心軽やか。しかし、その頃から雨が当たり始める。
避難小屋に向かう詰めを目指していたが、踏み跡が見つからず。歩きやすそうな所を選びながら稜線へと向かう。ガスも出てきたのでGPSで確認しながら、結局はニセ巻機山の直下に出た。避難小屋からニセ巻までの登り返しが省略できたということで良しとする。
14:15頃、下山開始する。夕立に遭い、急ぎ足で行く。5合目あたりからは雨も上がって、ブナ林の雨上がりの空気を楽しむことができた。
3か所ロープを出して登るところがあった。
「東京近郊沢登りルート」からの遡行図上③10m、⑦2段8m、⑧15m2段滝(取り付きが難しいが、残置スリングがかかっており、私はそれを足掛かりとして上がった)。
何度も訪れた巻機山の、また別の表情を見ることができたいい山行となった。